平家物語・横笛

伊東酒造・「横笛」の名前の由来は平家物語

長野県の諏訪五蔵の伊東酒造の主力商品「横笛」の名前は、日本の平安末期から鎌倉時代にかけてのことが記載した軍記物語である「平家物語」の「横笛」から来ています。

伊東酒造の記事で、コンパクトに横笛の要約を記載しようと思ったのですが、思いのほか長文になってしまったので、他の酒蔵の記事のバランスを考えて別記事にすることにしました。

横笛

出会い

時は平安時代。

ある宴で白拍子姿で舞う建礼門院の雑仕女(ぞうしめ:召使のこと)・横笛の姿に多くの多くの男性が一目惚れしました。その中に斉藤時頼という名門の武将がいました。

すれ違い

時頼は、父親に「身分違いだ。」と結婚を反対されながらも横笛に手紙を送り続けました。

しかし、横笛の元にはあの宴を境に多くの男性からの手紙が舞い込んできていました。横笛は「どうせ誰も本気じゃないでしょ?」と真剣に取り合わず焼き捨てていました。しかし、ただある男の手紙だけは気になっていました。時頼の書いた手紙でした。3日もあけずに来る手紙。「横笛ブーム」が過ぎて送られてくる手紙の数が少なくなっても、相変わらず時頼の手紙が来ます。「もしかして?」と思い、初めて時頼の手紙を読む横笛。それは、真心のこもった恋文の数々でした。今更、返事の手紙を書けないと思い悩み、「どうしてもっと早くこの方の手紙を読まなかったのだろう。」と時頼の思いを募らせながら、今までの自分の行動を後悔するのでした。しばらくすると時頼の手紙が横笛の元にパタリと来なくなりました。

別れ

一向に横笛から返事がこない時頼は、横笛の思いを断ち切るために刀を置いて仏門に入ります。「添い遂げるなら横笛ただひとり。」と思っている時頼は、世を捨てたのです。自分の隣に横笛のいない世は意味がなかったのです。

時頼の出家とその理由の噂を聞いた横笛は愕然とします。「世を捨ててもいいほど、私を思っていたの?」ますます自分の行動に後悔する横笛。今度は横笛は行動に出ます。時頼を探したのです。時頼が修行しているお寺を見つけたのですが、「そんな人いません。」と門前払いしまいました。

しばらくすると時頼は、完全に横笛と断ち切るために女人禁制の高野山へ修行に行くのでした。

では私も仏門に…

時頼に会うことができなかった横笛。「私も世を捨てます。」と時頼と同じ仏門に入ることを決意します。

やがて時頼が高野山へ修行の場を移動したことを知った横笛。高野山に近い麓の天野(あまの)という土地で暮らし始めました。

病魔が横笛の体に蝕む

小さな庵での修行が体に障ったのか、横笛はだんだん体が弱っていきます。

高野山の厳しい冬を避けて天野に滞在していた僧から名前を瀧口入道と改めた時頼は横笛の現状を知ります。瀧口は横笛に歌を送ります。

そるまでは 恨みしかど梓弓 真の道に 入るぞうれしき

(意味)

出家するまではこの世を恨みもしましたが、あなたも仏道に入られたとのこと。嬉しく思います。

横笛も「同じ轍は踏むまい」とすぐに瀧口に返事を送ります。

そるとても 何か恨みんあずさ弓 ひきとどむべき 心ならねば

(意味)

出家されたからといって、どうして恨みましょう。私に止められることではないのですから。

病魔が横笛を体を急激に蝕んでいき、床に伏せる日が多くなります。やがて横笛は瀧口に会うことなく亡くなります。横笛19歳でした。亡骸は、庵の近くに埋葬されました。

あなたに会いたい

瀧口は、修行の地高野山・大圓院(だいえんいん)の第8代世代住職になり、名前を阿浄律師(あじょうりっし)と改めました。ある時、阿浄は庭先の梅の枝にとまっている鶯(うぐいす)に目が離せなくなりました。鶯がじっとこちらを見て鳴いているからでした。

阿浄が庭に近づくと、鶯は羽ばたいたかと思うと、弱々しく井戸へと落ちていきました。その姿が初めて出会ったあの時の横笛の姿に重なりました。阿浄は悟るのです。横笛が亡くなって、鶯の姿になって自分に会いに来たのだと…。女人禁制の高野山。鶯の姿なら誰も決して咎められることはないのだから。

その後

阿浄は、井戸から鶯をすくいあげて、その亡骸を胎内に収めて阿弥陀如来像を彫りました。

僧侶は「おつとめ」と言って決まった時間に読経をします。僧侶は死ぬまで修行なのです。もちろん阿浄も「おつとめ」をします。阿浄の視線の先にはあの阿弥陀如来像があり、優しい眼差しで阿浄を見つめているのです。

解釈がいろいろある

横笛を書くのに、色々調べました。で、結構解釈が違うものがあって

タミ

どうしよう…

と思いましたが、伊東酒造のホームページの横笛の由来を読んで、創業者・伊東充氏の思いを想像してこのような要約にしました。

実在します

平家物語。「物語」と書いてあるので、架空の話かと思えば、実在します。

斉藤時頼という武将から僧侶になった人物は実在するし、横笛が最後を遂げた「天野」も和歌山県にあり、「横笛の恋塚」という名のお墓があります。

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この記事を書いた人

お酒が一滴も飲めないのに酒蔵めぐりをし、お酒を購入するのが趣味な人。「口で飲めないなら毛穴で飲んでやれ!」とお酒を材料にした化粧品を作成して日々消費する生活を送っています。

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