みなさん。ご機嫌いかがでしょうか。
「酒は一滴も飲めませんが、毛穴で飲んでいる女」こと岡元タミです。
今回は時代に振り回された酒蔵松井酒造のレポートです。
松井酒造(まついしゅぞう)
所在地 | 〒606-8305 京都府京都市左京区吉田河原町1丁目6 |
アクセス | 京阪電鉄鴨東線・叡山電鉄叡山本線 出町柳駅より徒歩約10分 |
直売所営業時間 | 9:00〜18:00(日祝・1/1〜4休) |
電話番号 | 075-771-0246 |
ホームページ | https://matsuishuzo.com/ |
オンラインショップ | https://matsuishuzo.com/?mode=f3 |
とんでもなくフラフラ
松井酒造に最寄りの駅から行ったのではなく、佐々木酒造から松井酒造に向かいました。佐々木酒造の時にも書いたのですが、とても迷うところにあるので、通常だと16分あたりで行けるところ、30分以上かけて歩きました。足元はスニーカーではなく、サンダルを履いていて調子が悪いかったのか流血しながら歩いていました。たぶん、足とサンダルの間に小石が挟まったのだと思います。佐々木酒造最寄りのバス停を探し出し(千本丸太町)、京都市営バス201号(時計回り)みぶ操車場前行きに乗りました。途中、渋滞にハマって全くバスが動かないことが度々あったので通常よりも遅く松井酒造最寄りバス停京大正門前に着きました。日はすっかり傾き急がないとお店が閉まっちゃう時間になっていました。
ここまで来て閉店はイヤ!
と思い、まるで「走るメロス」の如く酒瓶3本入ったリュックを揺らしながら松井酒造まで走って行きました。走るのは苦手ですし疲れていたのですが、切羽詰まったら走れるものですね。
死に物狂いで走った結果、間に合いました。直営店は街の酒屋さんの佇まいです。酒屋さんと違うのは並んでいるお酒が松井酒造の商品のみということだけです。松井酒造は生産量が少ないのが特徴の酒蔵です。それはどうしてか?
それはたった5人で酒造りをしているからです。
酒造りを断念しなくてはいけなかった過去
松井酒造は、京都市ではなく現在の兵庫県香美町で約300年前に誕生したそうです。当時の松井酒造は、酒造りだけでなく2艘の持ち船を使い廻船業もしていて北海道と交易していました。香美町が北前船の立ち寄り先だったのでこういうことができたようです。お酒を積んで北海道に行き、北海道の海の幸を積んで帰る。とても順調な商い状況だったと思われます。
商いが順調だったら「都」に向かいたいもの。江戸時代の末期に松井酒造は京都洛中に酒蔵を移します。勝負をかけてきたわけです。でも、江戸末期は京都にとっては動乱の時代を迎えます。幕末になり京都は治安が悪くなります。1864年の禁門の変で発生した元治の大火で酒蔵を焼失しました。歯を食いしばって立て直しをしているときに、京都は「都」ではなくなりました。東京に遷都されたのです。松井酒造は時代に翻弄されたのです。
時は進んで大正時代。京都に路面電車を走らせようということになりました。路面電車を走らせようとすると道路を拡張しなければなりません。松井酒造は拡張工事に範囲に引っかかってしまい、移転を余儀なくされました。移った先が現在のところになります。今までの実績が認められたのか、京都の名だたる神社・寺院からご用命をいただけるようになったのがこの時でした。
さらに時が進んで、昭和の高度経済成長期を迎えたときに松井酒造に激震が走ります。1968年に京都に地下鉄を走らせようという計画があがります。路面電車から地下鉄へ移行することになったのです。地下鉄なので、もちろん地下工事が必須となります。その影響により、松井酒造が使用していた井戸水が使えなくなるという事態になってしまいました。お酒造りで重要な水。生命線を絶たれたのです。これを機に多くの酒蔵が伏見に移ったといいます。松井酒造も他の水脈を探すこともできたと思いますが、当時、ビール・ウイスキーなどの台頭により日本では「日本酒ばなれ」が顕著になってきた時でもありました。松井酒造はある決断します。酒造りを断念したのです。酒造免許は集約製造の形をとって維持しました。
2009年。松井酒造14代目当主が酒造り復活の決断をします。杜氏・造り手がいない中での決断でした。どうしてもこの地で酒を造りたい。
でも、酒の命である水が…。
調べてみると幸いなことに地下鉄の工事により使えなかった水が濁ることなく澄んだ使える水に変わっていました。でもそれでは安心できない松井酒造。2つ目の井戸水を汲み上げ、「ダブル井戸水」体制を確立します。初代が井戸水を掘って飢饉を救ったこともあり、現在、蔵の前に蛇口があり誰でも使用可能になっているそうです。
肝心の酒造りは?
日本酒のビッグネーム「黄桜」が大学の同窓というご縁だけで全面協力し「鴨川蔵」を完成することができました。
蔵は完成したけど杜氏がいない!
能登から凄腕の杜氏道高良造氏をお迎えして当時の専務に「杜氏とはなにか?」を学びました。最初は、道高氏と専務の2人きりで酒造りをしていましたが、現在では5人体制となり、忙しい時は学生アルバイトさんにお手伝いしていただいているようです。現在の杜氏は、道高氏と二人三脚で酒造りをした専務。今では15代目当主の松井治右衛門氏です。
時代の動乱・文明の進化に翻弄された松井酒造。敵がいつも大きすぎて太刀打ちできないものばかり。今後は、大きすぎる敵に出会わないことを祈るばかりです。
購入したお酒
京千歳
千歳は永遠という意味があり、祝いの意味があります。ですので、京千歳は京都を永遠に祝うという意味があります。
こちらの商品は、京都の料亭にターゲットを絞った珍しいお酒です。お酒をメインとせず、お料理に合うようにおだやかな味わいのあるお酒に仕上げています。お食事のお供にどうぞ。
五紋神蔵 辛口純米(瑠璃瓶)
五紋神蔵は松井酒造を代表する商品です。五紋とは「甘い」「酸っぱい」「辛い」「苦い」「渋い」のバランスが取れているという意味を表します。偏っていないということですね。こちらのシリーズは無濾過・無加水・生原酒となっています。種類が多岐にわたるのもこのシリーズの特徴で、私の買った純米辛口はオンラインショップに記載がありませんでした。もう造っていないのか、季節ものの商品だったかもしれません。全て店頭で揃っているわけではなく、私が訪問した時は神蔵はこれしかありませんでした。もし、お目当てのものがあるのなら、ホームページで「搾り」情報がありますので参考にしてください。要冷蔵商品です。
購入しましたら上のデザインの紙袋に入れてくれます。酒瓶を入れるのでしっかりした紙袋です。私はただ可愛くて使うことなく保管しています。私が訪問したのが2018年なので、もしかしたら、違うデザインの紙袋になっているかもしれませんね。よく見たら松井酒造周りの観光スポットやゆかりの寺・最寄り駅の京阪電鉄の出町柳駅が描かれています。
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